「シン・ゴジラ」を観た(メモ)

すごい映画だった。ほんとうにすごい。すごすぎてみてる間「すごい」ってことばすら浮かんでこなかった。ただ放心状態で「シンゴジラ……」って思ってた。

未だに考えがまとまってなくてきちんとした記事には至りそうにないんだけど、かといってツイッターのほうに書き散らせばひどいネタバレになるなあと思ったので、雑然としたメモでいいからと、残しておきます。三回目見たらもーちょっとちゃんとまとめる。と思う。

当然だけどネタバレあります。

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想定外の連続

ゴジラを観るのははじめてだった。それどころか怪獣映画を観るのがはじめてだった。庵野秀明の作品を観るのも。

だからこの作品が、これまでのゴジラや、庵野作品に比べてどうとか、そういう話はぜんぜんできないし、作品内に散りばめられた過去作へのオマージュ、リスペクト、みたいな要素はまるで拾えない。どんな作品なのかな? って予想もできなかった。

シン・ゴジラがまずすごいのは、そんな状態のぼくですら「ええ!?」ってなっちゃうくらい、既存のイメージをとにかくぶち壊しにかかってくることだと思う。会議シーンの多さ、物語のスピード、最初に出てくるシンゴジラ第二形態の外見と、まるで最終的な着地点が予想できないストーリー展開まで驚かされる要素ばっかり。「こうなるのかな」がまるで通用しないから観てる間ずーっと固唾飲みっぱなしの体に力入りっぱなしだった。始終宙ぶらりん。そりゃパンフに「ネタバレ注意」とか書くわけだ。

 

莫大な情報量

そんなふうに前情報がぜんぜん役に立たない状況だから映画のなかの情報だけに頼らざるを得ないんだけど、その量がやばい。一回で処理しきれない。こんなに多量の情報を二時間ぶっ通しで脳みそにぶち込まれるって体験は貴重。それだけでチケット代のもとが取れる。

物語じたいそもそも情報の多いつくりでその上終始展開がトップスピードだから、無意識的に観てるだけでもすごい量が飛びこんでくるし、ゴジラの設定考証、政界や官僚や自衛隊への取材といった、ひとつひとつ途轍もない労力が注がれたディテールのこまやかさと、それが何故か観ていてある程度わかるようになってるの(これが庵野秀明の作風なんだろうか?)のおかげで、意識的に拾おうとしたらいくらでも拾えてしまう。

もうなんていうか規模がけた違いなんだ、シン・ゴジラは。破壊的にでかい。手が付けられない。怪獣映画は怪獣映画でも、怪獣(の)映画である以上に、怪獣(みたいな)映画、だと思った。

 

「現実対虚構」

そんなふうに、綿密な取材に裏打ちされ、凄まじい量の情報によって組み上げられた強固な舞台のなかで、今作のゴジラは、徹底して超越的で現実離れした、虚構の象徴として描かれている。フォルムは異様で、人間をまるで歯牙にもかけていないような行動には生きものっぽさがなく、放射熱線を吐くシーンは神秘的。鳴き声、足踏みの音、自衛隊や米軍の兵器の着弾音、といったゴジラにまつわる効果音だけ、やけに古くさいものが使われているのもたぶんそのためだと思う。

そのゴジラと、リアリティあふれる日本との対決。それがキャッチコピーにある「現実対虚構」なんだろうけど、ぼくにはどうも、この映画で取っ組み合う「虚構」と「現実」とは、それだけのように思えないなあと、こっからは完璧な邪推だけど。

たとえば、理想主義的な矢口蘭堂と現実主義的な赤坂秀樹との対照的な配置はわかりやすい例だろう。メタフィクション的な段階では、3.11を想起させるシーンのかずかずはぼくらの現実とシン・ゴジラという虚構との境界線をあいまいにするし、エヴァンゲリオンのBGMをテーマにひっさげてゴジラに立ちむかう巨大不明生物災害対策本部には、現実世界でゴジラシリーズの完全新作という巨大なプレッシャーを前にしたこの作品の制作陣のすがたが重なる。

また、徐々に切羽詰っていく政治家、避難を余儀なくされる一般市民、日本全体で、ゴジラの存在という信じられない状況が、受け止めざるを得ない現実へと変わっていく、その過程もまた虚構と現実とのせめぎ合いと言っていい。

主人公である矢口蘭堂のなかでの、その虚構から現実への書きかわりを描きかたはとくにわかりやすい。ネットやテレビ越しにしか観ていなかったゴジラの姿を、二度目の上陸のとき実際に眼にし、「あれがゴジラか」とつぶやく。その直後、同僚や上司を亡くすことによりゴジラの脅威を実感せざるを得なくなり、そして最後のヤシオリ作戦では、自ら危険を推して最前線に立ち、その遂行を見届ける。

その過程がきっちり描かれていたからこそ、あのシーンで何度も何度も映された、矢口の眼のカットには、俳優の演技だけでは説明がつかないくらいの説得力、切実さがあった。そのすべてを虚構として客観的に観ている、ぼく自身にまで挑みかかってくるように感じた。どうしてこんな異常事態を、おまえはこんなに暢気に観ていられるんだと、責め立てられているような。その感覚は、ぼくが3.11の報道をテレビで見ながら、感じていたものに限りなく近かった。

観たひとの現実そのものに、シン・ゴジラという虚構が挑みかかる。それこそが、「現実対虚構」の戦いなんじゃないか。だとしたら最後に記念碑のように東京都心で凍りつくゴジラは、これからこの世に残り続ける、この作品そのものを表しているのかもしれない。

 

思ったよりわりとちゃんと書けたので満足。ほんとすごい作品でした。IMAXとふつうのと、両方観たけどIMAXのほうが圧倒的に良いです。没入感がぜんぜん違うので、まだのかたは是非。放射熱線撃つとことかもうおしっこちびりかけましたよ。映像もさることながらBGMの響きとSEの説得力がケタ違いです。