二十歳になります

 こんな時間に小腹が空いて、コンビニの袋を下げて歩きなれた暗い道をぶらぶら歩いていたら、またトラックが追い越し、圧倒的にひとりで、冬の感じがつよくして、そういえば来週にはもう二十歳になるんだった。

 誕生日を祝ってもらえた経験と結びついているのかして、11月の気候をぼくは好きになっている。だいたい暑いのより寒いののほうが好きで、薄着するより厚着するほうが好きで、暑いと着た先で脱げばいいけど、寒いと着てきた服が足りなかったらあとはもう耐える以外どうしようもないのとかもけっこう悪くない。冬の朝は考えがはっきりして、足のさきが冷たいのをがまんしながら、いまならなあなあにしていることぜんぶに決着をつけてしまえるような思いがする。そんなことはありえない。でも、そういう気分でいる時間が、すくなくともぼくには必要だ。

 来週にはもう二十歳になる。いろんなことを考えて、言えるようになったけど、それと同時にいろんなことを考えそこねて、言えることを言わないことも増えた。よくなったとは思わなくても、高校生のときみたいにしていようとは二度と思わない。ハヌマーンも、もうそんなには聴かない。時間をむだにしたって、べつに死にたくなんかならない。誰のことも嫌いたくないし、歩くときは極力にこにこしていたい。いくらかの友達と、好きな女の子がいて、完璧にではないけど、去年の4月から、なんとか一人で暮らしてきた。部屋には読んでない本と借りっぱなしの漫画、捨て損ねたプラスチックごみ。小説家にあこがれっぱなしで、でも何が書けるわけでもなくて、ブログはくりかえす自戒まみれだ。でも、先月末は旅行に行って、ちょっといいコートを買った。写真も撮れて、自分で納得いく味のごはんが作れる。

 なにとはなしに、それでいいと思う。ぼくは二十歳になれると思う。ぼくは十代を後悔しないと思う。