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「 ライオン丸G」を観ました

ビデオ借りてちびちび見てたのがようやく最終回まで漕ぎつけたので感想を書きつけておきます。結論だけ先に書くとおすすめはしません。おもしろかったけど。

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特撮ヒーロー番組っていったらだいたい仮面ライダーとかスーパー戦隊とかウルトラマンとか、子ども向けにつくられている作品が多いけど、この作品はそうではない。いわゆる深夜特撮、牙狼とか衝撃ゴウライガンみたいな、ニッチな特撮ファンの大人のための作品だ。

だからだいたい朝とか夕方だと放送コードにひっかかるよーなエログロや子供受けしないホラーやシュールギャグ、陰鬱なストーリーが展開されがちなんだけど、ライオン丸Gはそういった深夜特撮のなかでもとくにその傾向が強い。

付けると発狂する謎のコンタクトレンズ・スカルアイが横行し治安の悪化した歌舞伎町が舞台。主人公の獅子丸は売れないホストでヒロインのサオリはキャバ嬢、ふたりを筆頭に登場人物はそろいもそろって下ネタを連発するし、戦闘は特撮よかキルビルみたいなアクション映画っぽく、闇金融や人身売買みたいなヤクザな話がぼかすか出てきて、なのにいつまでたってもみんなおちゃらけている。かと思えば終盤一気に陰鬱な展開へ転がりこみ、最終回では血みどろの残虐なシーンが続き、それでもまだ下ネタが続いている。それくらい、ライオン丸Gは悪趣味。とにかく悪趣味だ。

いちばん分かりやすくいうと、獅子丸が股間を掻きむしってるとこから始まってとんでもない下ネタで終わる。下ネタに始まり下ネタに終わる。それがライオン丸Gという作品である。

 

でもそれでいて、物語自体はけっこうふつーにヒーローモノやっているのがこの作品のおもしろいところだ。ふつーどころか、物語の大筋を見てみると、むしろ多くのヒーローモノよりも真摯に「 変身ヒーロー」というものと向きあっていると感じられる。

ある日突然ほとんどたまたまみたいな経緯で変身能力を与えられた男が、どのようにそれを受けいれて、己のありかたを変革させていくか、というのはひとつ変身ヒーローモノの多くが共有するテーマだとおもう。つまりそういう場合、ヒーローが完成する過程を描くわけだけど、ただ多くの場合、ヒーローが未完成の状態が長引くことはあまりないし、完成の過程をじっくり描いてくれる作品というのはまだ見たことがない。

たぶん、それじゃヒーローモノとして成立しないからだ。だからぼくがこれまで見てきた特撮ではたいてい、主人公が最初からある程度ヒーローらしい素質を持った状態からスタートしていた。

ただライオン丸Gは違う。なんてったって深夜特撮でコンセプトも右に書いたような人好きのするものだからまずヒーローモノとして成立する必要がない。だから獅子丸は物語開始当初、どころか最終回ギリギリまでひどい臆病者で、最初に変身したときは自分の姿にさえ怯えていた。それが少しずつ自分の宿命を受けいれ、戦う覚悟を固めていく、というのが大筋になる。一シーン一シーンみるとめちゃくちゃやってるんだけど全体を俯瞰してみるとその獅子丸が覚悟を固める道筋というのはけっこう整理されていて、ここがすごく意欲的だなと思うところだし、それがそのまま続けば名作になれたかもしれないけど……ただそうもいかなかった。

問題は、けっきょく獅子丸が己の宿命を受けいれて最終決戦に臨むとき、その動機が義憤ではなくてたんなる私怨だということだった。つまり「 どういうものがヒーローか」「 どういう姿勢が正義なのか」という、ヒーロー像の確立には至らなかった。まー平成ライダーが一年まるまる使ってできない場合もあるよーなことだし、一クールでは到底できないんだけど、だからってこの物語の不完全さを許容できるかっていうとそうでもないよな……大風呂敷ひろげて畳めなかったってかんじが強い。

 

深夜特撮という特殊なステージでさらに特殊なことに挑戦し、しかし変身ヒーローというジャンルの掲げるテーマに誰より真摯に向きあい、けれども最後まで行きつけなかったライオン丸Gは、何というかすごくひとことでは言い表しづらい作品だ。意欲作なのは確かなんだけど、失敗作と言い切っていいのかどうか……不愉快なところも多いんだけど、観てて楽しいのは確かだし……大成功か大失敗で言えば大失敗なんだけど、成功か失敗かで言えば成功のよーな気も……。

なんにしても、「 知る人ぞ知る」で済ませておくにはあまりにも、いやちょっと、ほんと、ほんのちょっと。ほんのちょっとだけ惜しい作品だ。気になったらでいいから観てほしい。