2017-01-01から1年間の記事一覧

Faces of Strummer

窓のそとを流れていく、車のヘッドライトや街灯のまぶしさに塗れたコンクリートのうえの雨を見るためにこのバスに乗り込んだんだったらよかったのに。なんにも考えないで無造作に席に座っている、ぼくはこまかい動作でいちいちかっこつけなくなって、かっこ…

窓・壁

そりゃもちろん、暑い時期は窓なんか閉め切って冷房を効かせるに決まっていて、かといって寒い時期は寒い時期で暖房が要るからやっぱり窓は閉まっているはずで、当たり前にもほどがあるけれどあらためて、こうやって夏のくたばっていく日々のいくつかを外に…

近況

なんとなく昼間見始めた映画が、ついたり消えたりして九時ごろ、ようやく半分くらいまで行ったあたりで、演出上の都合ではさまれた静けさに、釣銭が6枚落ちる音と缶のプルトップが起きる音とひとの咳、爪、たぶん人差し指の、が薄っぺらいアルミ缶をかつかつ…

旅行

そこから帰るのには六時間かかる。各停しかないローカル線をつかって新幹線の通る駅まで、おなじ電車に三時間乗り続ける。中学生だか高校生だか、集団で乗り込んできて人口密度が増したから、知らない街で買った真新しいシャツがまた汗に湿った。網棚の上に…

こい緑がぼくを

山の天気は不安定だ、窓の外で雨の急に強まるのが聞こえて、びっくりしてカーテンを開けると赤い折り畳み傘をさしたひとがそこの大通りを左へ歩いていくのが見えた。たとえ天気が良かったって今日はなんにも出かける用事なんかないし出かけたい気持ちもない…

五月

音楽の途切れた部屋になにか生きものの息遣いみたいな音があるのに気づいて、皿を洗いながらちょっと怖くなる。洗濯機の回っている音だと気づいたときには逆にもっと怖くなった。ついさっき自分で回したのに忘れていた。来てすぐ、自分で洗濯をすることに慣…

クリープ

部屋にはベランダがないので洗濯物を干すとなると窓のそばにかかっている2メートルくらいの物干し竿に昼間洗濯物を干して、寒かったり暑かったりしない限り窓を開けておき、ぼく自身は風が直接当たらないベッドのほうで音楽をかけて本を読んだりしている。…

四月

今日は一限から授業で、眠いし寒いし行きたくないんだけど仕方ないのでぼちぼち大学まで自転車を漕いでいた。大学構内に入って、桜の木の並んで立っている下り坂に差し掛かり、さっきまでの長い上り坂で乱れた息を整えて視線を上にあげたら、どの桜もやたら…

たぶんエアコンの室外機とかそうでなければ観葉植物とかを置く為のものだと思うんだけど、窓から外に付きだしたベランダのミニチュアみたいな空間がある。小学生の頃帰り道に買ったコーラの缶をなんでかそこに置いて、今もそのままで、強い風が吹いて窓ガラ…

東京

東京駅の角っこにあるスターバックスでスーツ姿と並んで本を読んでいたら、音程のないぼやぼやしたパイプオルガンみたいな音が急に聞こえてきて、なにかと思って耳を澄ませると、どうもそれは高速バスから降りて駅に一挙に入ってきた人たちの足音や声が駅の…

卒業

駅の切符売り場で、ぼくは財布をさがして鞄を漁っている。探す時間が長引けば長引くほど、ああぼくはかっこわるいなあと心底惨めな気持ちになり、焦るというより脱力してしまい、さらに見つけるのが遅れていく。イヤフォンから流れてくる8ビートにイラつい…

トラベルプラン

ようやっと受験が終わったっていうのに解放感とかは別になくて、そりゃここ一ヶ月勉強してなかったから当たり前なんだけどなんとなく拍子抜けしている。 思ったより簡単に終わったしあんなに思いつめなくてよかったなとか、結局またまじめに頑張らないままや…